ひとりごと

10月12日のひとりごと

こういった世界的大事をむかえると、必ず予言や予知などの話題が持ち上がる。

特に大友克洋氏の『AKIRA』は、2020年の東京オリンピック中止(実際は延期だが)が描かれていたことで、あたかも予言書のようにネットやニュースで騒がれ話題となった。
物語は2月28日オリンピック開催の147日前の東京を舞台にしたものだが、ボクたち現実の2月28日はWHOが新型コロナウイルスの警戒レベルを最高危険度と発表した日でもあり、まるで漫画のような未曾有の事態が世界中ではじまった。
※漫画原作1982年‐1990年、映画公開1988年

漫画『AKIRA』よりさかのぼること約20年の1964年。よりリアルにこのコロナ禍を予言したような小説があったのをご存じだろうか。
小説家・小林左京が書き下ろした『復活の日』は、まさに現状のウイルスで苦しむ世界を描いたものである。
世界中に人工ウイルスが蔓延し人類滅亡の危機という、なんともなんとも恐ろしいSF小説なのだが、各国は戒厳令を発し、ロックダウンを余儀なくされ、病院に感染者が殺到し、医療従事者はもとより国民も疲弊し、先行き不透明な現実に疑心暗鬼になり暴動が起こり、権力者や有名人も次々に感染し亡くなっていくなど、ついちょっと前まで連日連夜ニュースで流れていた内容がフィクションとして描かれている。
※小説原作1964年、映画公開1980年(監督・深作欣二)

SF小説(空想科学小説)の楽しみ方というのは、「そんなことが起こったら怖いなあ」と危機を想像したり、考えたりするものなのだけど、被害の大小はあれ現実に起こってしまうと、娯楽として描いた創作文が、未来を描いた紀行文を綴った『予言書』になるのかもしれない。

いつかSF小説家に会ったら聞いてみたい。
未来を予言するような物語となったとき、それは小説家冥利に尽きるのだろうか。

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